【監督指導による賃金不払残業の是正結果(令和2年度)】勤怠管理は企業の責務です
目次
1 監督指導による賃金不払残業の是正結果(令和2年度)
●是正結果のポイント
●賃金不払残業の解消のための取組事例
2 勤怠管理は企業の責務
1 監督指導による賃金不払残業の是正結果(令和2年度)
令和3年9月22日に、厚生労働省より、「監督指導による賃金不払残業の是正結果(令和2年度)」が公表されました。
これは、労働基準監督署が監督指導を行った結果、 令和2年度(令和2年4月から令和3年3月まで)に、不払いとなっていた割増賃金が支払われたもののうち、支払額が1企業で合計 100万円以上 である事案を取りまとめたものです。
●是正結果のポイント
1.是正企業数 1,062企業(前年度比549企業の減)
うち、1,000万円以上の割増賃金を支払ったのは、 112企業(同49企業の減)
2.対象労働者数6万5,395人(同1万3,322人の減)
3.支払われた割増賃金合計額 69億8,614万円(同28億5,454万円の減)
4.支払われた割増賃金の平均額は、 1企業当たり658万円、 労働者1人当たり11万円
●賃金不払残業の解消のための取組事例
監督指導の対象となった企業において、調査のきっかけとなった事例、その問題解消のための取組事例も公表されています。
【事例1】
~調査のきっかけ~
「出勤を記録をせずに働いている者がいる。管理者である店長はこのことを黙認している。」との情報を基に、労基署が立入調査を実施。
~指導内容~
ICカードを用いた勤怠システムで退社の記録を行った後も労働を行っている者が監視カメラに記録されていた映像から確認され、賃金不払残業の疑いが認められたため、実態調査を行うよう指導。
~企業が実施した解消策~
・労働者の正確な労働時間について把握すべく実態調査を行い、不払となっていた割増賃金を支払った。
・労務管理に関する研修会、法令遵守教育、賃金不払残業を発生させない企業風土の醸成を図った。
・社内コンプライアンス組織の指導員を増員して、店舗巡回を行い、抜き打ち調査を行うことにより勤怠記録との乖離がないか確認することとした。
【事例2】
~調査のきっかけ~
「時間外労働が自発的学習とされ割増賃金が支払われない」との情報を基に、労基署が立入調査を実施。
~指導内容~
ICカードを用いた勤怠システムにより労働時間管理を行っていたが、ICカードで記録されていた時間と労働時間として認定している時間との間の乖離が大きい者や乖離の理由が「自発的な学習」とされている者が散見され、賃金不払残業の疑いが認められたため、実態調査を行うよう指導。
~企業が実施した解消策~
・勤怠記録との乖離の理由が自発的な学習であったのか否かについて労働者からのヒアリングを基に実態調査を行った。この結果、自発的な学習とは認められない時間について不払となっていた割増賃金を支払った。
・代表取締役が適切な労働時間管理を行っていくとの決意を表明し、管理職に対して時間外 労働の適正な取扱いについて説明を行った。
・事業場の責任者による定期的な職場巡視を行い、退勤処理をしたにもかかわらず勤務している者がいないかチェックする体制を構築した。
ほか
【事例3】
~調査のきっかけ~
「自己申告制が適正に運用されていないため賃金不払残業が発生している」との情報を基に、労基署が立入調査を実施。
~指導内容~
生産部門は、IC カードを用いた勤怠システムにより客観的に労働時間を把握している一方、非生産部門は、労働者の自己申告による労働時間管理を行っていた。
非生産部門の労働者について、申告された時間外労働時間数の集計や、割増賃金の支払が一切行われておらず、賃金不払残業の疑いが認められたため、実態調査を行うよう指導。
~企業が実施した解消策~
・非生産部門の労働者について、申告が行われていた記録を基に時間外労働時間数の集計を行い、不払となっていた割増賃金を支払った。
・非生産部門もIC カードを用いた勤怠システムで労働時間管理を行うとともに、時間外労働を行う際には、残業申請書を提出させ、残業申請書と勤怠記録との乖離があった場合には、実態調査を行うこととした。
ほか
【事例4】
~調査のきっかけ~
「退勤処理を行った後に働いている者がいる」との情報を基に、労基署が立入調査を実施。
~指導内容~
ICカードを用いた勤怠システムにより労働時間の管理を行っていたが、労働者からの聴き取り調査を実施したところ、退勤処理後に労働をすること、出勤処理を行わず休日労働をすることがある旨の申し立てがあり、賃金不払残業の疑いが認められたため、実態調査を行うよう指導。
~企業が実施した解消策~
・労働者へのヒアリングや アンケートなど により実態調査を行った結果、全社的に退勤処理後の労働が認められ、また、出勤処理を行わず休日労働を行っていることが判明したため、不払となっていた割増賃金を支払った。
・36協定時間外労働の協定届の上限 時間数を超えないために、時間外労働の適正な申請 をためらうことが賃金不払残業の一因となっていた。このため、各店舗の勤務状況の実態調査を行い、人員不足や業務過多の店舗に対する人員確保や本社からの応援を行い、店舗の業務が過度に長くならないような措置を講じた。
2 勤怠管理は企業の責務
上記の事例からも分かるように、労働基準監督署の調査では、労働時間の記録方法だけでなく、実態と剥離はないかなど、細かなところまで指摘されます。
また、すべての事例において、正しい労働時間を調査し、不払いとなっている時間について遡及して賃金を支払っています。
厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」では、勤怠記録の方法として、
・使用者が、自ら現認することにより確認し、適正に記録すること。
・タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録すること。
としています。
しかし、せっかく勤怠システムを導入しても、残業を申請させないような空気ではいけません。
過重労働は過労死を引き起こすことが分かっていますから、従業員の健康確保のためにも、勤怠管理に対する意識を再度確認してみてはいかがでしょうか。
おわりに
弊所は、勤怠管理システムの「ちゃっかり勤太くん」、「ジョブカン」の認定アドバイザーです。
弊所からのご紹介で割引制度もありますので、勤怠管理システムの導入をお考えの企業様はぜひお問合せください。
(初期設定等は基本的に企業様で行っていただきます)
ちゃっかり勤太くん
ジョブカン勤怠管理
お問い合わせはコチラ
SNS